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間違いだらけの寝具選び


寝具というのは十分に研究されていないところがあったりするので、世の中には結構妙な「定説」が出回っていたりするし、ヘンなことをPRしているケースもある。寝具を売っている人間は専門店といえども、商品のことや素材のことを知らないケースが結構多い。製造卸の人間ですらそうなのだから無理もないだろう。ちょっとおかしいと思うこと、ヘンな定説をメッタ切りにしてみようというのがこのコラムの趣旨である。
もちろん、私が全てを知り得る立場でもないので、間違いがあったらお教え願いたい。


羽毛布団編

ポーランド産のマザーグース羽毛を使っていますから、良い羽毛布団ですよ

たしかにポーランドは良い羽毛のとれる産地だ。うちの原料でもマザーグースのハンドピックだとかさ高18.0cmあって、一般的にはトップグレードの品といっていいだろう。

しかし、例えばであるが新潟の魚沼産コシヒカリは確かに良い米だけれど、そして越後は米どころだけど、越後の米が全て良い米ではないのである。さらにいえば、米でも偽装問題があった。一時期魚沼産は実際の生産量の10倍が出回っていたらしい。

産地とダウン率を鵜呑みにしてはいけない。だいたい産地表示自体が怪しいものが多い、日本へ入ってくる羽毛原料の輸入先は中国と台湾で全体の8割を占めるのだが、その反面ヨーロッパ産表示のものが実に多い。あんなにたくさん輸入されているものか。
最高級で年間2000kgぐらいしか採取できないアイダーダウンですら、市場にはその10倍近くが出回っているといわれている。原産地証明なんて、なんとでもごまかせるのだ。

マザーグース(親鳥)というのも眉唾なものが多い。マザーグースは非常に少ないからだ。本物を名乗るなら最低17.5cm以上必要だろうね。もし、私が 1.マザーグースで嵩高16.5cmの羽毛 2.通常のグースで嵩高16.5cmの羽毛があったとしたら、迷うことなく2.の通常のグースを取る。マザーグースでも16.5cmしか出ないような農場はかなりレベルが低いといわねばならない。
最近はマザーグースならぬマザーダックなんてのが出てきて、ややこしさに拍車をかけている。市場のマザーダックを見ると嵩高14.5〜15cmあたりのが多いので、特にマザーという有り難みがあるわけでもない。字面だけで判断するとロクなことがない。

羽毛は農作物と同じである。いい羽毛は、良い環境で手間隙掛けて長期間育成して、丁寧なハンドプラッキング、工場での洗浄と選別。全ての過程で手間を掛けて生まれるのである。カウフマン社の会長だったボーラーさんが、「健康な鳥からは、健康な羽毛が採れる。いつまでも元気だ」とおっしゃっておられたが、その通りだと思う。ブロイラーみたいに育てた鳥と、天然で放し飼いで育てた鳥はそりゃ違う。リフォームをするとはっきりわかるもの。

かさ高が全てではないが、良し悪しを見極める一つの材料といえるだろう。


バイオアップ(あるいは○×アップ)加工で本来の羽毛の嵩を出しています

この手のシールが貼られた羽毛を店頭でご覧になったことはないだろうか。「羽毛を本来の嵩にもどす」というパワーアップ加工だ。趣旨は良く理解できるが、そんなに良い加工なら最高級品も含めて全てパワーアップ加工をすれば良いはずなのだけど、実際にパワーアップ加工をPRしているケースは低価格のダックダウンや15cmクラスのレギュラーグースがほとんどで(ググってみると判る)、上質のマザーグースでバイオアップをPRしているケースはほとんどない。低グレードのダウンにパワーアップ加工を施して、見かけ上の嵩高性を出したとしても、本来のダウンそのものが良くなければ、使っているうちに馬脚を現してしまう。
パワーアップ加工で14.5cmの嵩高と非加工で14.5cmなら、私は非加工を選ぶ。もっとも、私の店の基本は最低16.5cmだから、14.5cmなんて原料は使わないけれどね。

「奥さんこの羽毛すごい嵩でしょ、良い羽毛ふとんですよ」

過ぎたるは及ばざるが如し、という言葉があるが、今の日本の高級羽毛ふとんはどれも入れすぎである。カタログを見て欲しい。16.5cm以上の羽毛でもシングルで1.3kgぐらい入れるのが当たり前になっている。確かに嵩が出ていれば保温性は良くなる。しかし、羽毛ふとんの本来の良さは天然のエアコンといわれるところにあるのだ。保温するだけでなく湿度もうまく調整してくれるはずなのである。

しかし、これらの羽毛は4月や10月では暑すぎて使えない。ぎゅうぎゅうに詰め込むものだから、通気性も悪いので蒸れてしまう。日本の住環境は高気密性になりつつあるから、逆行といえるだろう。むしろ昔より控えめにしなければならないのだ。

さわだの場合110g/uクラスの生地で平均的な4×5マスの羽毛ふとん、かさ高16.5cmなら1000gで十分すぎである。(生地が重いと抑えられるので150g/uの生地なら1100g、逆に95g/uの軽量生地なら900〜950gで良い)。羽毛はたっぷりと空気を含み吐き出すことが出来る。

実はメーカーの商品開発担当者と話をすると「良い羽毛を軽い生地に入れて800から900gぐらいが一番いいですよね」とのたまう。実際ドイツで売られているのはこのクラスが多い。それじゃなぜしないのかというと「販売サイドから嵩がないとだめだ、売れないといわれてしまう」からなのだそうだ。

そういえば大手R社はかつて18.5cmクラスの最高級ダウンを90g/uクラスの超軽量の生地に1.5kgも詰め込んでぽんぽんにしていたことを思い出した。その時に担当者と話をしたが、このメーカーは羽毛ふとんのことがほとんどわかっていなかった。

かと思えば、I社は嵩高をあまり謳っていないので好印象だが、使っている生地がいくらノンダウンプルーフとはいえ重すぎる。羽毛布団の調湿効果は羽毛によって行われるべきなので、厚手の生地は生地自体に湿気が吸われてしまうので、おすすめとは言えない。

ドイツのメーカーは●〜●●●●●まで保温力を5段階に分けて、消費者が選択できるようになっている。本来そういうものだろう。
日本睡眠環境学会で「羽毛のつめすぎは羽毛ふとんの性能を損ねる」とまじめに発表したのは、N川リビングの社員さんだったと記憶しているのだけれど・・・


ゴアテックスは本当に蒸れないのか?

ゴアテックスと呼ばれる、スキーウェアでは、水は通さず水蒸気を通すというのでポピュラーだが、これを利用した羽毛布団がある。曰くホコリを出さず、吸わず、水蒸気だけが入れ替わるので、蒸れにくい。というが、実際ゴアテックスのスキーウェアでも蒸れる時は蒸れる。実際にゴアテックスメンブレンのシルク生地で実験したら蒸れてしょうがなかった。
この件については拙ブログの記事で取り上げたが、布団の場合でもJISの水分移動試験を評価する際に実際には問題と思われるのは、吸湿性や透湿性も静的な数値として出てくるが、実際にヒトが睡眠時に発汗する状態とは異なる数値なので、数値と実感の差が出てくるということである。その点からすると、蒸れにくいというメーカーの主張をそのまま取り入れるには無理があるのではないか。


.「やっぱり丸洗いできるふとんが良いですね」

できないよりできるほうがいいだろう、とは思う。しかし、ふとんの性能を落としてウォッシャブルを実現しているケースが多いので、どちらをとるのかという問題がある。

まず、羽毛ふとん。丸洗いできる羽毛ふとんはほとんどが生地の通気性を犠牲にしている。一般の平均的な羽毛ふとんの生地の通気度は1.3〜1.6cc。しかしウォッシャブルを謳う羽毛の生地はポリエステル混が大半で通気度は0.7〜0.9ccとかなり落ちる。結果蒸れる→汗で汚れる→洗えるということなのか(苦笑)。

さわだで使っているS59生地は通気度2ccだからずいぶん違うことがわかるだろう。ちなみにS59は手洗いならOKである。私の知る範囲では綿100%のウォッシャブルはシキボウのニューピスト(160双糸サテン)オビキス(60サテン)のノンダウンプルーフ生地(樹脂加工していないので吸湿性も良い、生地がちょっと重い)、蔭山の新製品の60サテンぐらいか。

ヨーロッパの生地はウォッシャブルを謳えるものが多い。これは日本が光沢と手触りを重視してサテン(朱子織)が中心なのに対し、ヨーロッパは無地が多く、洗い耐性の強いバティスト(平織)が多いためでもある。

羊毛は洗うとフェルト化するので、ウォッシャブル加工はスケールという羊毛表面のウロコを薬剤で溶かすか、樹脂等でコーティングするのだが、この加工によって羊毛本来が持つ機能が大幅に低下してしまうのだ。

それ以外の洗える布団はポリエステル繊維であるが、さわだのポリシーからいえば論外である。洗えるからといって実際に洗うとなるとかさが大きいので大変だ。肌ふとんやベッドパッド程度ならともかく、洗う人はすくないのではないか?本当はカバーなど肌にあたるものをこまめに洗うことをおすすめしたいのだ。



ベッド・マットレス編


まくら編





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